口腔ケアとは、お口の中のお掃除のことです。口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防や虫歯・歯周病予防に有効です。中でも歯科医師・歯科衛生士が行う口腔ケアはプロフェッショナル口腔ケアと呼ばれ、患者様のご家族では難しい場所のお掃除もきれいに行うことができます。
歯周病患者さんは、全がん発症リスクが14%上昇(おくちの中以外のガンも含まれます)
また、虚血性心疾患罹患率が59%高くなります。
(Michaud DS et al.Lancet Oncol 2008, Bahekar AA et al. Am Heart J 2007より)
脳血管疾患の発症率を63%上昇させることもわかっています。(Lafon A et al. Eur J Neurol 2014)
つまり、歯周病菌は日本人の死因別にみた死亡率上位の疾患に関連していることがわかり、口腔ケアを定期的に行い口腔内を清潔にすることでそれらの疾患を未然に防いだり、重症化を防ぐ効果が期待できるといえます。
それだけでなく、口腔ケアを行うことにより全身の疾患に係るリスクを低減できるため年間の医療費の削減にも効果的であると考えられます。
下図は、日本人が何を理由に死亡するかをわかりやすく表したグラフであり、下図におけるオレンジ枠は、歯周病が関与する場合がある疾患です。(厚生労働省の人口動態統計調査より引用)
年を重ねるとともに高齢者の心身の虚弱が進むことをフレイルといい、患者様の状態を包括的に捉え、比較的早期からの介入を試みることで重症化を予防します。
オーラルフレイル(お口の中のフレイル)の症状
・口腔に現れる虚弱
・滑舌低下
・食べ物が食べづらくなってきた
・わずかなむせ
・食べこぼし
対応: 普通の歯科治療、予防介護
人間はお口に食物を取り込むことでエネルギーを生み出します。まずはそのお口の中にトラブルを抱えていないか早期に診査診断を行い、歯科だけでなく医師・看護師・介護士・ケアマネージャーその他介護従事者と協力し環境の改善、リハビリを行うことで患者様の状況の悪化を防止します。
また、お口の中のトラブルの改善が図られてからが特に大切で、特に口腔内においてはプロフェッショナル口腔ケアを定期的に行うことで誤嚥性肺炎の予防、歯周病予防、虫歯の早期発見に役立ちます。
当医院では、口腔ケアについて大切にしているのが全身の病気との関係性です。
お口の中の歯周病菌は病原性が強く、例えば糖尿病の患者様の歯周病が進むことにより糖尿病がより悪化することも少なくありません。
また歯周病が進行すると血液中に歯周病菌が流れ込み、心筋梗塞の原因になったり心内膜にひっかかり心内膜炎を起こしたりします。そのような患者様に対して急に、歯茎の奥のほうの歯石(縁下歯石)を取ることは好ましくなく、慎重に、また場合によっては投薬をして歯周病菌を減らしてから歯石除去・口腔ケアを行うことが重要と考えます。
当医院では歯周病リスクの高い方に対応できるよう、歯周病の認定医が常勤しております。
歯周病のリスクを取り除くことは、体の免疫力を回復させる点においても有利となります。
また、口腔ケアを行いお口の中を清潔に保つことで、就寝時の唾液に混じる菌の全体量が減り、唾液を誤嚥した際の誤嚥性肺炎のリスクを低下させることができます。
ただし、歯周病菌の病巣となっている歯石を1回除去するだけですぐに回復するわけではありません。定期的にメインテナンスを行い、常に清潔な状態を保つことが大切です。
年齢を重ねるにつれて全身の筋肉は衰えていき(フレイル)、それに伴い口腔機能や摂食嚥下機能も低下していきます(口腔フレイル)
宇宙から帰還した宇宙飛行士が筋力を取り戻すのと同じように、一度低下してしまった筋力はトレーニングをすることである程度戻すことが可能な場合があります。
全身の筋肉トレーニング
食べ物をお口に運ぶのが困難な方、コップでお口をすすぐのが難しい方への筋力トレーニングに関するアドバイスを歯科医師の視点から行います
お口の周りの体操
今よりもっと食べ物が食べやすくなるようにお口の周りの筋肉の体操を行います
舌の体操
舌の機能が落ちることで、食べ物を送り込むことが困難になります。また誤嚥性肺炎の発生の原因にもなるので、舌の訓練をしっかり行っていきます。